お子さんがかかる病気で特に注意が必要なもの

小児がん

小児がんとは、子どもにみられるがんの総称です。一般的には、15歳未満の子どものがんのことをいいます。

小児がんには様々な種類がありますが、大きく分けると約3分の1が白血病、残りが固形がんという、固まりを形成するがんとなります。

小児がんと成人のがんとの違いは、生活習慣が発生原因となることがほぼないということです。症状もほとんどないと言われているため、風邪だと思って受診した結果、がんと診断されるということも少なくありません。

小児がん

症状は、種類だけでなく年齢によっても違いがあります。特に骨や関節の痛みは小児がんに多い症状です。白血病や骨肉腫などが原因となっていることもあるので、早めに受診してください。

小児がんは早期発見が難しく、がんの進行も速いですが、化学療法や放射線療法の効果が得られやすいのも特徴です。私も大学病院で小児がんを専門的に診ていたときには、元気になって退院していくお子さんを沢山みました。

当クリニックでは、小児がんの早期発見ができるよう血液検査を院内で行うなど、各種検査にも力を入れています。少しでも不安なときはご相談ください。

心臓病

子どもの心臓病には、生まれた時から病気をもっている先天性の病気(先天性心疾患)と、生まれてからかかる後天性の病気(後天性心疾患)があります。

先天性心疾患は、およそ100人に1人の子どもがもっていると言われ、その原因はわかっていません。先天性心疾患の病態は治療の必要がない軽いものから、手術が必要な重症のものまで様々です。日本で多い先天性心疾患は心室中隔欠損で、先天性心疾患の約3分の1を占めています。

心臓病

心室中隔欠損は、心臓の左心室と右心室の間の壁に穴が開いている状態です。5人に1人は小さな穴で自然に塞がりますが、穴が大きい場合は手術が必要です。症状はなく、雑音も小さいため、小さい頃に発見されず、学童健診などでの心電図異常で見つかることも少なくありません。

子どもの後天性心疾患は、全身の病気の合併症として発症するケースが多くあります。後天性心疾患の原因になる病気の代表例が川崎病です。

川崎病の原因はわかっていません。生後6ヶ月〜5歳の乳幼児期に発症し、発熱、目の充血、唇の赤み、舌のブツブツ、発疹、手足の腫れ、首のリンパ節の腫れといった症状が現れます。
川崎病にかかると、心臓の血管にこぶができることがあります。そこから血管が詰まり心筋梗塞を起こす危険があるため、定期的な診察が必要です。

気管支喘息

気管支喘息は、気道に慢性的な炎症が起きることで、咳や呼吸困難、ゼーゼー・ヒューヒューという音(喘鳴)などの症状を繰り返す病気です。

気管支喘息の原因としては、もともともっているアレルギー体質に、花粉やダニ、ウイルス感染などの刺激が加わることがあげられます。6歳頃までに発症するケースがほとんどです。

気管支喘息

重症の場合はステロイド薬の点滴や、入院が必要になることもあり、場合によっては人工呼吸器も使われます。特に子どもがアレルギー体質である場合は、ただの咳と軽く見ず、すぐに受診してください。

食物アレルギー

食物アレルギーは、特定の食べ物に含まれる成分に身体が反応し、口腔内の腫れやのどの痛み、発疹など、さまざまな症状を引き起こします。原因の多くは食物に含まれるタンパク質にあります。

アレルギー反応が強い場合に起こるのが、アナフィラキシーです。アナフィラキシーは、アレルギー反応により、発疹などの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、息苦しさといった呼吸器症状が複数かつ同時に強く出現した状態を指します。

食物アレルギー

アナフィラキシーの中でも、血圧や意識レベルの低下が見られるアナフィラキシーショックの状態は、命に関わる重篤な状態です。

乳幼児期に起こるアナフィラキシーは、食物アレルギーによるものが多くなっています。お子さんに食事を与えるときには、普段と違う様子はないかよく観察しながら食べさせましょう。

気をつけるべき症状

元気がない、ぐったりしている

お子さんが元気がなかったり、ぐったりしていたりという症状は、幅広い病気の兆候として見られます。心臓病や重篤な感染症、お腹の病気なども考えられるでしょう。場合によっては緊急手術が必要なこともあり得ます。ですので、ちょっと元気がないだけと軽くみるのは危険です。

お子さんの様子を観察するときには、普段とどのくらい違うのかを見ることが大切です。例えば、好きな食べ物やおもちゃなど、普段なら興味を示して喜ぶものを見せて、その様子を観察してみてください。普段との違いは、近くで接しているご家族にしかわかりません。ですので、ご家族が少しでもおかしいと思えば、迷わず医療機関を受診してください。

呼吸や顔色が普段と異なる

呼吸の様子や顔色も、お子さんを観察するうえで重要な要素です。呼吸がいつもより速くないか、回数が多くないかを確認します。さらに、呼吸の仕方も注意深くみましょう。肩を上下させた呼吸や、肋骨や鎖骨の間がくぼむような呼吸は危険のサインです。そうした呼吸をしているときには、すぐに医療機関に相談してください。

顔色は、まずは普段に比べて白くないかチェックしましょう。続けて、唇の色がいつもより黒っぽくないかを確認します。唇が紫色のときは、血液中の酸素が不足している恐れがあり、緊急を要する状態です。もし可能であれば、まぶたの裏側の色も観察してください。普段より白っぽい状態は貧血の可能性があるので、注意しなければなりません。

下痢や嘔吐を繰り返している

下痢や嘔吐も気を付けるべき症状です。赤ちゃんの場合、もともと便が水っぽいのでわかりにくい部分もありますが、普段と比べてどうかというのを観察します。便の色や状態が普段と異なる場合は、ほかの症状と合わせて注意深く見てあげてください。

嘔吐の場合は、直前に食べたものはもちろん、2〜3日前に食べたものも関係することがあります。ですので、受診前に、3日前からの食事を思い出していていただけると、診察がスムーズに運ぶでしょう。

また、感染症の可能性もあるため、周りに同じような症状の人がいないかといった情報も大切です。加えて、診断には嘔吐物の色も重要なので、どのような色だったかも把握しておきましょう。可能であれば、スマートフォンで吐瀉物を撮影しておくのもおすすめです。

すぐに受診が必要なケース

食後に湿疹が出た

食後に湿疹が出たり、体調が悪そうにしていたりするときは、食物アレルギーの可能性があります。食物アレルギーは、様子をみているうちにどんどん状態が悪化していく恐れがあるので、すぐにお越しください。

特に離乳食を始めた頃は注意が必要です。卵や小麦などアレルギーが出やすい食品は、様子を見ながら少しずつ食べさせ、徐々に量を増やしていってください。当クリニックでも、予防接種などで来院する保護者の方には、「初めての食べ物は、クリニックが空いている時間帯にチャレンジしてくださいね」とお伝えしています。そうすれば、異常があってもすぐに受診できます。

食欲がなく1日以上経っている

お子さんに食欲がなく、食べたり飲んだりが1日以上できていない場合は、当クリニックにお越しください。水分が摂れないことで、脱水を起こしている可能性もあります。

ただし、脱水が心配だからといって、無理に食べさせてはいけません。無理して食べたことでさらに症状が悪くなる危険もあります。点滴で栄養分や水分を補い、身体を立て直したところで食事をとることが大切です。

受診する際には、お子さんが摂った食事や水分の量をおおまかにでもお伝えいただけると、診断の助けになります。

熱が3日以上続いている

熱が続いているときには、すぐに受診してください。熱があるとお子さん自身もつらいですし、保護者の方も心配ですよね。

ただし、感染症の可能性もあるので、当クリニックでは、Web問診または電話で事前にご相談いただくことをお願いしています。発熱のある患者さんには、それ以外の患者さんと別のエリアでお待ちいただく必要があるからです。

また、発熱に加えてブツブツなどの発疹があり、水ぼうそうといった感染力の強い病気が疑われる場合は、個室でお待ちいただきます。他人に感染させてしまうかもという保護者の方の不安を少しでも取り除ける体制にしていますので、どうぞご相談ください。

受診すべきか迷ったら

もしものときのためにかかりつけ医登録を

かかりつけ医登録とは、病気の診療だけでなく予防接種や乳幼児健診、育児相談などを通して、子どもの成長を総合的にサポートするための制度です。当クリニックを4回以上受診(予防接種、健診を含む)したことがある、6歳未満の子どもであれば、どなたでもご登録いただけます。

かかりつけ医として継続的に受診していただくメリットは、お子さんの既往歴や服薬状況、成長具合など把握しやすくなることにあります。お子さんを医師が把握していることで、急に具合が悪くなった際の対応もスムーズです。

当クリニックでは、専門的な治療が必要と判断した際には、しかるべき病院に紹介することもできます。また、かかりつけ医登録のある患者さんは、時間外での電話相談にも対応可能です。お子さんの”もしも”に備えて、かかりつけ医登録をご検討ください。

重い病気を見逃さないために、私たちがしている工夫

病気の早期発見、早期治療に繋げるため、同院では様々な検査に対応しています。例えば、血液検査は基本的な項目であれば、院内での検査が可能です。院内検査であれば40分程で結果がでるので、異常が認められた場合の対応も早く行えます。その他、エコー検査によって痛みがある箇所を調べ、悪性の可能性があるかないかを診ることもできます。

一方で、当クリニックではCTやMRIといった大規模な画像検査はできません。そうした検査が必要だと判断した場合は近隣の病院をご紹介します。

また、私だけでは診断がつかないときには、市立病院や大学病院にご紹介することも大事にしています。お子さんの重い病気の早期発見には、私の視点だけではなく、多くの目で診ることが有効な手段であるからです。

重い病気を見逃さないために、私たちがしている工夫

子どもの異変に早く気が付くコツ

お子さんの異変に早く気が付くには、普段からお子さんをよく見ていなければなりません。その点、診療をしていて実感するのは、お子さんの異変に気が付くのはお母さんであることが少なくないことです。男女の育児負担の平等が叫ばれる時代ですが、やはりお母さんの観察力は素晴らしいと思います。

ですので、お母さんがお子さんの様子をみて普段と何かが違うと思ったら、受診していただくのがいいでしょう。もしかしたら、周りの人は”気のせい”だというかも知れません。しかし、”気のせい”でもいいので受診してください。検査の結果、何も心配がなければそれだけでほっとできます。

こんなことで受診していいの?なんて悩まず、お子さんに少しでも心配なことや、医師に相談したいことがありましたら、いつでもご来院ください。